個人事業主の確定申告 Q&A
お答えします
判定に使うのは売上ではなく所得です。1年間の所得の合計が、基礎控除をはじめとする所得控除の合計額を超えるときに申告義務が生じます(所得税法120条1項)。給与を1か所から受けている方は、事業の所得が20万円以下なら申告は要りません。報酬から源泉徴収されている方は、納めすぎていれば、義務がなくても申告して取り戻せます。
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一解説
所得税法120条1項は、その年分の総所得金額などの合計額が所得控除の合計額を超える場合に、確定申告書を提出しなければならないと定めています。判定の材料は売上金額ではありません。売上から必要経費を引いた所得です。
まず事業所得を計算します。売上から必要経費を引き、青色申告をしていれば青色申告特別控除を差し引いた残りが事業所得です。以降の判定はすべてこの数字で行います。
次に所得控除を積み上げます。基礎控除のほか、国民年金と国民健康保険の保険料は社会保険料控除、国民年金基金や小規模企業共済の掛金は小規模企業共済等掛金控除として全額を引けます。生命保険料控除や医療費控除もここに入ります。所得の合計がこの積み上げを超えなければ、120条の申告義務は生じません。
基礎控除の額は令和7年分から変わりました。合計所得金額が132万円以下なら95万円、132万円超336万円以下が88万円、336万円超489万円以下が68万円、489万円超655万円以下が63万円、655万円超2,350万円以下が58万円です(令和7年分・令和8年分)。令和6年分以前は2,400万円以下が一律48万円でしたから、判定の目安そのものが動いています。令和9年分以後は、132万円以下が95万円、それを超えて2,350万円以下が58万円となります。
給与所得がある方は、120条ではなく121条1項の判定に入ります。給与の収入が2,000万円以下で、1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象になっている場合、給与所得と退職所得を除いた所得の合計が20万円以下であれば、確定申告書の提出を要しません。
この20万円も報酬の入金額ではありません。売上から必要経費を引いた後の所得で数えます。報酬の合計が20万円を超えていても、そこから必要経費を引いた後の所得が20万円以下であれば、この入口に収まります。
給与を2か所以上から受けている方は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与・退職以外の所得との合計で20万円を判定します。ただし、給与の収入金額から所得控除(雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、かつ給与・退職以外の所得が20万円以下であれば、申告は不要です。
原稿料・デザイン料・講演料など、所得税法204条に挙げられた報酬を受け取る方は、支払いのたびに所得税および復興特別所得税を差し引かれています。税率は支払金額100万円以下の部分が10.21%です。
この源泉徴収は、支払金額だけを見て機械的に計算されます。必要経費も、基礎控除も社会保険料控除も入っていません。年間を通して見ると、本来の税額より多く納めている状態になっていることが少なくありません。
給与であれば年末調整で1年分がならされますが、報酬にその仕組みはありません。精算の場は確定申告だけです。所得税法120条1項は、控除しきれなかった源泉徴収税額がある場合を申告義務から外しています。納めすぎている方は義務者から外れ、122条により、還付を受けるために申告できる人になります。
確定申告の期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日まで、期限も3月15日です。
還付を受けるための申告は、確定申告期間と関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。源泉徴収されていた年の申告を出していない方は、さかのぼって取り戻せます。
青色申告特別控除は、法定申告期限までに確定申告書を提出することが最大額の適用要件です。3月15日を過ぎて提出すると、青色申告特別控除は10万円になります。所得が所得控除に届かない年でも、青色申告をしているなら期限内に出しておく実益があります。
なお、所得税の申告が不要な場合でも、お住まいの市区町村への住民税の申告は別に必要になることがあります。20万円以下の所得を所得税で申告しなかったときが、その代表です。
二一次情報
所得税法 第120条第1項(確定所得申告)(抜粋)
第百二十条 居住者は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が第二章第四節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において、当該総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第八十七条第二項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額、課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第八十九条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるとき(第三号に掲げる所得税の額の計算上控除しきれなかつた外国税額控除の額がある場合、第四号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた同号に規定する源泉徴収税額がある場合又は第五号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた予納税額がある場合を除く。)は、第百二十三条第一項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き、第三期(その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
所得税法 第121条第1項・第3項(確定所得申告を要しない場合)(抜粋)
第百二十一条 その年において給与所得を有する居住者で、その年中に支払を受けるべき第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この項において「給与等」という。)の金額が二千万円以下であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。ただし、不動産その他の資産をその給与所得に係る給与等の支払者の事業の用に供することによりその対価の支払を受ける場合その他の政令で定める場合は、この限りでない。
一 一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下この項において「給与所得及び退職所得以外の所得金額」という。)が二十万円以下であるとき。
3 その年において第三十五条第三項(雑所得)に規定する公的年金等(以下この条において「公的年金等」という。)に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が四百万円以下であるものが、その公的年金等の全部(第二百三条の七(源泉徴収を要しない公的年金等)の規定の適用を受けるものを除く。)について第二百三条の二(公的年金等に係る源泉徴収義務)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、給与所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び公的年金等に係る雑所得以外の雑所得の金額の合計額をいう。)が二十万円以下であるときは、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額又は課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。
所得税法 第122条第1項(還付等を受けるための申告)(抜粋)
第百二十二条 居住者は、その年分の所得税につき第一号から第三号までに掲げる金額がある場合には、次条第一項の規定による申告書を提出することができる場合を除き、第百三十八条第一項(源泉徴収税額等の還付)又は第百三十九条第一項若しくは第二項(予納税額の還付)の規定による還付を受けるため、税務署長に対し、第百二十条第一項各号(確定所得申告)に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載した申告書を提出することができる。
所得税法 第204条第1項(源泉徴収義務・報酬、料金等に係る源泉徴収義務)(抜粋)
第二百四条 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
一 原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金
二 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
三 社会保険診療報酬支払基金法の規定により支払われる診療報酬(略)
四 職業野球の選手、職業拳闘家、競馬の騎手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
五 映画、演劇その他政令で定める芸能又はラジオ放送若しくはテレビジョン放送に係る出演若しくは演出(指揮、監督その他政令で定めるものを含む。)又は企画の報酬又は料金その他政令で定める芸能人の役務の提供を内容とする事業に係る当該役務の提供に関する報酬又は料金(これらのうち不特定多数の者から受けるものを除く。)
六 キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という。)のその業務に関する報酬又は料金
七 役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの
八 広告宣伝のための賞金又は馬主が受ける競馬の賞金で政令で定めるもの
国税庁 タックスアンサー No.1199 基礎控除(抜粋)
基礎控除は、納税者本人の合計所得金額に応じてそれぞれ次のとおりとなります。
132万円以下48万円/95万円/95万円
132万円超336万円以下48万円/88万円/58万円
336万円超489万円以下48万円/68万円/58万円
489万円超655万円以下48万円/63万円/58万円
655万円超2,350万円以下48万円/58万円/58万円
2,350万円超2,400万円以下48万円/48万円/48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円/32万円/32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円/16万円/16万円
2,500万円超0円/0円/0円
(注1) 令和7年分の上記規定は、令和7年12月1日に施行されます。施行日前の適用関係などについては、「令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A(令和7年5月)」をご確認ください。
(注4) 令和元年分以前の基礎控除の金額は、納税者本人の合計所得金額にかかわらず、一律38万円です。
国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(抜粋)
大部分の給与所得者の方は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますから、確定申告の必要はありません。
しかし、給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人(確定申告をすれば税金が還付される人は除きます。)は、確定申告をしなければなりません。
1 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人
3 給与を2か所以上から受けていて、かつ、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える人(注)
(注) 給与の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く。)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の人は、申告は不要です。
4 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
5 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
6 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
7 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
国税庁 タックスアンサー No.2020 確定申告(抜粋)
所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算して確定させる手続です。
源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、この確定申告によってその過不足を精算します。
対象者または対象物
確定申告をする必要がある方
その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合で、その超える額に対する税額が、配当控除額と年末調整の際に控除を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人は、確定申告をする必要があります(控除しきれなかった外国税額控除の額、源泉徴収税額または予定納税の額がある場合を除きます。なお、この取扱いは確定申告書の提出期限が令和4年1月1日以後となる確定申告書について適用され、当該提出期限が同日前となる場合にはこれらの控除しきれなかった額があったとしても確定申告をしなければならないこととなります。)。
確定申告をする必要がない方
給与の収入金額が2,000万円以下、かつ、給与を1か所から受けていて、その給与の全部について源泉徴収される人で給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下である人等、一定の場合には確定申告をしなくてもよいことになっています。
※ 給与所得がある人で確定申告をする必要のある人については、コード1900「給与所得者で確定申告が必要な人」をご覧ください。
また、国内において公的年金等の支払を受けている人については、次のいずれにも該当する場合、確定申告をする必要はありません。
1 その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下である。
2 その公的年金等の全部が源泉徴収の対象(注)となっている。
3 その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である。
(注) 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書の提出先であって、その年中の年金の額が一定の金額に満たないため源泉徴収を要しないこととされているものは、ここにいう「源泉徴収の対象」に含まれます。
申告等の期間
原則として、その年の翌年2月16日から3月15日までです。
申告等の期限
原則として、その年の翌年3月15日です。
国税庁 タックスアンサー No.2030 還付申告(抜粋)
確定申告書を提出する義務のない人でも、給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときは、確定申告をすることによって、納め過ぎの所得税の還付を受けることができます。この申告を還付申告といいます。
還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
ただし、青色申告特別控除(55万円、65万円)を受けようとする場合など、法定申告期限(原則翌年3月15日)までの確定申告書の提出が要件となっている特例を適用する場合には、還付申告であっても法定申告期限までに提出する必要があります。
国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(抜粋)
青色申告者に対しては種々の特典がありますが、その1つに所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円を控除するという青色申告特別控除があります。
国税庁 タックスアンサー No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき(抜粋)
居住者である作家に原稿料を支払うときや大学教授などに講演料を支払うときは、報酬・料金等として所得税および復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
源泉徴収すべき所得税額および復興特別所得税の額は支払金額(源泉徴収の対象となる金額)により次のようになります。
支払金額(=A)が100万円以下A×10.21%
支払金額(=A)が100万円超(A-100万円)×20.42%+102,100円
※引用は原文のままです。読みやすさのため改行位置を調整し、一部を抜粋している箇所があります(編集・加工を行った部分)。最新の内容は必ず出典元のページでご確認ください。
三個人事業主の場合
会社員との違いは、税額を精算してくれる人が誰もいないことです。給与なら年末調整で1年分がならされますが、業務委託の報酬は支払いのたびに概算で引かれるだけで、経費も所得控除も反映されません。取引先によっては源泉徴収されないこともあり、その場合は、1年を通じて一度も納めないまま年を越します。
判定に入る前に、まず1年分の売上と必要経費を集計してください。ここが出ないと、20万円の入口も、所得控除との比較も始まりません。事業所得が赤字であれば申告義務は生じませんが、源泉徴収された税額の還付も、青色申告特別控除も、申告して初めて手元に返ってきます。
※実際の取扱いは業態・契約・実態により異なります。個別の判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。
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